歩く・乗る・また歩く——ウブドで心地よく暮らす一日のリズム
ウブドは、歩いてこそその魅力がわかる街です。これまでの滞在では、4〜5kmを歩くのは当たり前、時には10km近く歩く日もありました。
でも、シニア世代になってからは、さすがに以前のように歩き通すのが辛くなりました。。
そんな時、前回のウブド滞在中に試してみたのが「トランス・メトロ・デワタ(Trans Metro Dewata / TMD)」という公共バスでした。

プリペイドカードの入手には少し手間がかかりましたが、一度乗ってみるとその快適さにすっかり魅了されてしまったのです。
「歩く → TMDに乗る → また歩く」この穏やかなリズムが、ウブドでの一日をゆったりと整えてくれる——。そんな体験を、私自身の感想を交えてご紹介します。
歩いて楽しいウブド、でも……
ウブドの中心部は、カフェやレストラン、雑貨店や工芸品のショップが立ち並ぶ、歩くだけでも楽しいエリア。通り沿いの小さなギャラリー、高級なバティックから手ごろなアクセサリーまで、同じ店を何度訪れても新しい発見があります。
グルメも豊富で、ローカルフードからインターナショナル料理まで、気分に合わせて選べるのが魅力です。
一方で、中心街から少し離れると、まるで別世界が広がります。チャンプアン・リッジウォークでは、バリらしいライステラスの風景が広がり、ニュークニン(モンキーフォレストの南)には静かな住宅街が続きます。

ウブドの四方には、それぞれ違った魅力のある散策スポットが点在しています。
以前は、「テガルサリ」滞在中に一日10km近く歩くこともありました。朝の涼しいうちに出発し、田んぼの風を感じながらのんびり歩く、途中で飲む冷たいフレッシュジュース、そんな時間が何よりの楽しみでした。
けれど、最近は少しずつ体力的にきつくなり、街の中心をぐるりと回る4kmほどの散歩でも坂道がこたえるように。
「もう少し楽にウブドを歩けたらいいのに」と思っていた矢先、インターネットで目にしたのが「トランスメトロデワタ(TMD)」という新しい公共バスでした。
ウブド到着の翌朝、宿(テガルサリ)のレストラン「セメスタ」で朝食をとっていると、モンキーフォレスト通りを赤いバスが走り抜けていくのが見えました。
「あれがトランスメトロデワタ?」と夫と顔を見合わせ、見た目のきれいさと快適そうな雰囲気に惹かれ、さっそくその日の午後は停留所探しの散策へ。
何度も訪れているウブド。一方通行の通りを把握していたため経路は簡単に予想がつきました。一方でバス停のマークは意外と地味で見落としがち。「これは一度、実際に乗って確かめなくては」と思いました。
利用にはプリペイドカードが必要ということで、カードを発行するといわれているインドマレット(Indomaret)やアルファマート(Alfamart)を巡りましたが、どちらも「扱っていない」との返答。
このひと月の滞在を快適に過ごすには、ぜひともカードを手に入れたい——そう思い、宿から約2km離れた銀行へ。
専用窓口がなく一般の順番待ちとなり、手続き完了まで約2時間。カード取得まで思いのほか長い道のりでした。
それでも、帰りに銀行近くの停留所から初めてTMDに乗車したとき、その快適さに一気に疲れが吹き飛びました。
エアコンの効いた車内、静かな走行音、そして窓から見えるゆったりしたウブドの風景。私たちシニア世代にとって、「TMDバス」はウブドでの生活に欠かせない「新しい足」になりました。
ウブドを走るTMDバスの仕組みとルート
ウブドの街なかでTDMを便利に使いこなす秘訣は、経路とバス停位置を頭に入れておくことです。
一方通行を知ると、ウブドの交通が見えてくる
まず押さえておきたいのが、ウブド中心部の一方通行の向きです。
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モンキーフォレスト通り → 北方向への一方通行
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ハノマン通り → 南方向への一方通行
この流れを理解しておくと、TMDの動きがよく理解できます。(一方通行について知っておくと、Grabやホテル送迎を頼む時も役立ちます。)
TMDはデンパサール方面からプリアタン通り → アンドン交差点 →ラヤ・ウブド通り → ハノマン通り → モンキーフォレスト通り → 王宮前 → アンドン交差点 → 再びプリアタン通りへと、“コの字+折り返し”のような循環をしています。
停留所は以下のように配置されています。
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ハノマン通り:3ヶ所
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モンキーフォレスト通り:3ヶ所(うち1つはモンキーフォレスト駐車場内)
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ラヤ・ウブド通り:2ヶ所
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プリアタン通り:1ヶ所
まず、TDMに乗って一巡してみることをお勧めします。バス停の位置と経路が分かれば、日々の外出でどのように利用すればいいかが分かってきます。
また、バスのシートは高いところにあるので、乗っているだけでいつもとは違うウブドの街を感じることができます。

時間は“目安” 待つ時間もバリのリズム
TMDには時刻表がありません。おおよそ15〜20分間隔で走っていますが、20分以上来ないこともあれば、2台続けてやってくることも。
最初は戸惑いましたが、バリの時間の流れに慣れてくると、苦になることはありません。返って、時間に追われる日本と対局にあることが、バリで暮らすように過ごす心地良さを感じさせてくれます。
「暑い中を歩くより、20分でも30分でも待とうか」——そんな気持ちの余裕が、シニア世代にはぴったりです。
支払い方法|ICプリペイドカード&QRコード決済
運賃はひと乗り一律Rp4,400(約40円)。距離に関係なく同一料金で、現金払いは不可です。
ICプリペイドカードの場合

カードの入手は、一応コンビニと銀行となっていますが、私たちがコンビニで尋ねると「ありません」と言われてしまいました。
ウブドでは銀行が確実です。カード代は約250円。チャージはRp50,000〜Rp100,000(11〜22回分)で十分です。

私たちはラヤウブド通りのアンドン交差点近くにある「Bank BNI」で購入しました。ただし銀行では手続きに時間がかかり、2時間ほど待ちました。
空港の銀行でも発行しているので、到着時に空港の銀行で購入しておくのがおすすめです。
QRコード決済(QRIS対応)
スマホを使い慣れているなら、GoPayやOVOなどのアプリで支払うのが便利。事前に課金を済ませ、通信環境を整えておくことをお忘れなく。
ただ、スマホ決済がうまくいかず運転手さんと長い時間やりとりしていた観光客がいたので、私たちはICプリペイドカードを使っています。
乗り方と降り方|基本は日本と同じ


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バス停で待つとバスが停まります。
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前方ドアから乗り、タッチパネルにカードまたはスマホをかざす。
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降りたい場所が近づいたらボタンを押し、後方ドアから降車。
2025年1月に一時運休しましたが、4月に再開。現在もルートや料金は変わらず運行されています。運行間隔は以前よりやや長くなり、約20分前後。
最終便は、以前は20時前後でしたが再開後については不明いなので、夜間の利用は事前に確認が必要です。

シニア長期滞在者にとってのメリット
- 交通費を大幅に節約できる
近距離はTMD、遠距離や荷物がある時はGrabやホテル送迎車を使うことで、体力とお財布の両方を守れます。
- 「暮らすように滞在」ができる
観光客向けではなく、地元の人と同じ移動を体験することで、バリの日常が見えてきます。市場帰りの人、親子連れ、通勤途中の人。バリの生活を感じながら移動する時間は、観光バスでは得られない贅沢です。
- 一番のメリットは、外出が億劫にならず、街歩きが若い時と同じように楽しめることです。


私のTMD活用例|歩いて・乗って・また歩く

スーパーCOCO前バス停
モンキーフォレスト通りもデヴィシタ通りも、みて楽しめるお店がたくさんあります。せっせと歩けば20分ほどですが、ウインドショッピングをしながらだと1時間余りかけての散策です。
デヴィシタ通りの周辺はカフェもレストランも充実しているので、その時の気分で選べるのが嬉しいところ。
帰りは、ハノマン通りの停留所でバスに乗れば、わずか数分でテガルサリ近くまで移動することができます。
最初にこのコースを試してみた時、その快適さにすっかりはまってしまいました。
次は逆の利用もしました。TDMでデヴィシタ通り近くまで行き、帰りはハノマン通りをぶらぶら。ハノマン通りもアタカゴの「アシタバ」などもありるので歩きたい通りです。
毎回ウブドを訪れると、デルタデワタまで「ブラッドワンギ」の石鹸を1年分購入するために出かけます。

以前は宿のテガルサリから徒歩で往復。5kmくらいの行程です。そのうち行きだけホテルの無料送迎をお願いするように。買い物のあとは、途中カフェによりながら歩いて帰っていました。
重い大量の石鹸を抱えての2km余りの帰り道は結構大変。そこで往復ともTDMを利用(往復で80円)することに。おかげでいつもより多めに石鹸を買うことができました。

大抵、行きは途中で食事をして公演場所まで移動するのですが、会場近くの王宮までTDMを利用することで、疲れることなく舞踊をじっくり鑑賞できました。
こうして、いつのまにかTDMを移動の足として自然に利用できるようになっていきました。

TMDのパンフレットはインドネシア語のみ。乗り換え場所を見極めるのにひと苦労でした。パンフレットとGoogleマップを突き合わせながら、「たぶんこのルートかな?」と半ば勘を頼りに小さな冒険気分で出発。
結果的に乗り換え場所は合っていたものの、同じ停留所に別路線のバスもやって来るため、最初は少し混乱しました。
それでも、停留所で一緒に待っていた現地の人が親切に教えてくれ、無事に目的地までたどり着くことができました。こうした思いがけない人とのふれあいも、路線バス旅ならではの魅力です。

2回目のデンパサール行きでは、途中の村でちょうど祭礼と重なり、バスがしばらく立ち往生するハプニングも。
けれど、誰ひとり文句を言う人はいません。むしろ、乗り合わせた日本語が堪能な女性が「今はお祭りで通れないんですよ」「もう少しで動くと思います」と笑顔で説明してくれ、運転手さんまで「降りて写真を撮って来ていいよ」とドアを開けてくれました。
いつのまにか乗合バスがちょっとした観光バスに早変わり。そんな鷹揚でおおらかな時間の流れこそ、バリらしい旅の楽しみです。



これまでデンパサールには行ってみたいけれど、車をチャーターするほどではありませんでした。でもTDMのおかげで、気軽にデンパサールまで出かけられるようになったのです。
注意点とデメリット
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時間は正確ではありません。20分前後待てば“多分来る”感覚で。
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停留所がわかりにくいところがあります。地図アプリでお気に入り登録を。
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朝夕は混雑。シニアなら無理せず1本見送る余裕を。
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英語表記がありません。
ウブド内は、循環して場所を把握しておくのがおすすめ。
乗り換えを伴う遠出は難易度が高い。
空港アクセスはどうする?
TMDを乗り継げば空港にも行けます(片道Rp8,800で格安)が、空港乗降場所や乗り換えを考慮すると、荷物の持ち運びが大変。
空港アクセスは、ホテルの送迎やオンライン送迎サービスを利用した方が快適です。TMDはあくまで「ウブド内の移動+近距離のお出かけ」に向いています。
まとめ|シニアの街歩きを支える“第3の足”
TMDバスは、シニアの長期滞在にやさしいウブドの足です。中心部の一方通行を理解すれば、乗り降りは驚くほど簡単。歩く距離を半分にし、街の風や人々の暮らしを感じながら移動できます。
「今日はここまで歩こう」「1本見送ってのんびり行こう」
そんな小さな判断の積み重ねが、バリでの“暮らすような滞在”を穏やかに支えてくれます。


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