バリの祈りと暮らし

ウブド バリ舞踊の楽しみ方|スマラ・ラティ舞踊団の見どころ・席選び・注意点

バリ旅行で、「舞踊だけでなく、本格的なガムラン演奏も聴いてみたい」と思ったことはありませんか。

スマラ・ラティ舞踊団の公演には、踊りを伴わないガムラン演奏のみの演目があります。演奏者の表情も豊かで生き生きとしていて、観ているこちらまで楽しい気分になるのが、この舞踊団の大きな魅力です。

この記事では、ウブドの夜を落ち着いて楽しみたい方初めてバリ舞踊を観る方に向けて、スマラ・ラティ舞踊団の公演を、実際の鑑賞体験をもとに紹介します。

私たちが初めてスマラ・ラティを観たのは、20年以上前のことです。ガムラン演奏の楽しさが客席まで伝わってくるような雰囲気に惹かれ、その後も何十回と鑑賞を重ねてきました。

舞踊団の歴史や魅力、公演内容、席の選び方、持ち物、開演前にしておくと安心なことまで、実際に通って感じたことを通ってわかったことを書いています。

*記事内の情報は2026年4月時点のものです。公演日時・会場・料金・内容は変わる場合がありますので、最新情報は宿泊先、現地案内所、公式情報などで確認してください。

バリ風の装飾が施された舞台で、スマラ・ラティ舞踊団の楽団がガムランを演奏している様子。

舞踊だけでなく、楽団演奏も魅力のスマラ・ラティ

ウブドで人気のバリ舞踊「スマラ・ラティ舞踊団」とは

創設者アノム・バリス氏と舞踊団誕生の背景

スマラ・ラティ舞踊団は、バリ舞踊の名手として知られるアノム・バリス氏によって、1980年代後半に結成されたとされています。

バリの石壁を背景に、白いTシャツ姿の男性

アノム氏宅近くの「スレッズ・オブ・ライフ」へ出かけた際、偶然お会いした時の写真

アノム氏は、バリ国立芸術大学(ISIデンパサール)で学んだ若い演奏家や舞踊家たちを集め、「伝統を大切にしながらも、新しい表現に挑戦する舞踊団」を目指しました。

バリ舞踊は本来、寺院の儀式や村単位(バンジャール)で奉納される芸能です。寺院の祭礼だけでなく、葬式(ガベン)など人生の節目でも舞われ、信仰と暮らしに深く結びついています。

実際に私たちが見学したバリの葬式における奉納舞踊は、その場にいるだけで背筋がのびるような雰囲気がありました。その様子については、別記事で紹介しています。
▶︎ プレボン前夜|ワリ舞踊と奉納の祈り

アノム氏は、舞踊を「奉納の場」だけにとどめず、芸術として磨き、舞台で表現するという新しい道を選びました。

奉納舞踊から舞台芸術へ|スマララティの特徴

当初、スマラ・ラティの試みは順風満帆ではありませんでした。地域からは「なぜ奉納以外の舞台で舞うのか」という声もあり、観客がほとんど集まらない夜もあったそうです。

創設当初から関わってきた奏者のひとりは、「観客が10人来れば大成功。雨が降れば公演は中止。楽器を運ぶだけでも大変だった」と話してくれました。

その言葉には、苦労を笑い話にする余裕と同時に、ゼロから文化を育ててきた誇りがにじんでいました。

それでも、ゼロから文化を育てる誇りとともに、活動を続け、いまでは世界各国の舞台に招かれる存在となり、ウブドを代表する舞踊団のひとつとして知られています。

スマラ・ラティの舞台は、伝統の型を大切にしながらも、時代に合わせた演出や構成が工夫されています。観光客にも理解しやすく、それでいて奥行きのある表現が魅力です。

奉納舞踊の精神を根に持ちながら、舞台芸術として進化を遂げた——それが、スマラ・ラティ舞踊団が「先駆的な存在」と呼ばれる理由なのだと感じています。

初めて観たスマラ・ラティ公演|忘れられない体験談

初めてスマラ・ラティの舞台を観たのは、ウブド中心部から少し外れたクトゥ村の集会所。夕暮れとともにランプが灯され、椅子が並べられただけの簡素な会場でした。

開演30分前には前方席はすでに満席で、熱気に包まれていました。

照明が落ちた瞬間、静まり返った客席の後方から煌びやかな衣装のダンサーが優雅に踊りながら入場、そのあとに続くガムラン奏者の楽器を奏でる音色が次第に近づいてくると、胸が高鳴っていくのを感じました。

伝統衣装を身につけた男性が、寺院風の舞台でバリスを踊っている。

ウブド随一の踊り手といわれるアノム氏の「バリス」

アノム氏の力強くも神秘的なバリスの舞、夫人アユ氏の優雅で切れ味のある踊り、奏者同士が楽しそうに掛け合う姿。何度見ても魅せられてしまいます。

紫と金色の衣装でタルナジャヤを踊るバリ舞踊の女性

アユ氏の迫力と気迫と優雅さが一体となった「タルナジャヤ」。

そして初めてガムランだけのオリジナル楽曲を聴いたのです。体のなかにリズムが刻み込まれていく、まるでジャズのような演奏で、帰り道でもずっと余韻が残り、体が自然と揺れていました。

舞踊とガムランの魅力

スマラ・ラティの最大の魅力は、舞踊とガムラン演奏の絶妙な融合にあります。戦いの場面で太鼓の音が胸を突き刺すように響き、恋物語のシーンではダンサーの切ない表情に胸が熱くなります。

同じ演目であっても、日によって演奏の熱量や踊り手の感情表現が変化するため、何度観ても新鮮で、新たな感動があります。

大抵のバリ舞踊では、踊り手の華やかさに比べ、ガムランの奏者は淡々と演奏を続けています。

しかし、スマラ・ラティはガムラン奏者たちも実に表情が豊かです。互いにアイコンタクトをとったり、微笑みを交わしたり、時には掛け合いでダンサーと一緒に体をゆらしたり。

ガムランを演奏するバリ舞踊公演の楽団

他の舞踊公演では、奏者のこのような笑顔を見ることはあまりありません。

ハノマン役の踊り手が、舞台上で奏者に向かい合っている場面。

ハノマンを演じる踊り手に向ける、奏者の笑顔にも惹きつけられます。

舞台全体が生き生きとしていて、他では決して味わえない胸踊る雰囲気があります。

衣装・化粧・表情|舞台裏で見たダンサーの素顔

レゴンダンスを踊る2人のバリ舞踊の女性

華やかな衣装と扇の動きが美しい、バリ舞踊の花形レゴンダンス。

スマラ・ラティの舞台では、衣装や化粧の美しさも見どころ。金色の冠、鮮やかな布地、そして細部にまで施された装飾。ダンサーが舞台に立った瞬間、観客は神話の世界へ引き込まれてしまいます。

ある時、踊りを終え楽屋に戻ったダンサーを見かけたことがあります。汗を拭きながら化粧を落とした素顔は普通の学生のようで、舞台上とのギャップに親近感を覚えました。

舞台の上では神の化身のように見える彼女たちも、一人の少女。そうした一面を知ることで、さらに舞台への敬意が深まりました。

世代を超えて受け継がれる舞|アノム氏の孫が見せた「バリス」

色鮮やかな伝統衣装を身につけた子どもが、舞台でバリ舞踊を踊っている。

堂々とした舞に会場からは「ブラボー」の声も。

公演の最後に登場したのは、アノム氏のお孫さんでした。まだ幼いながら、戦士の舞「バリス」を堂々と舞い、会場からは大きな拍手が起こりました。

アノム氏によると、正式に教わったというより、祖父の舞を見よう見まねで覚えたのだそうです。指先から足先まで緊張感が通い、小さな体から強い意志が伝わってくるようでした。

伝統は、教室の中だけでなく、家族や日常の中で自然に受け継がれていくのだと感じた場面でした。

次に訪れるとき、この少年がどんな舞を見せてくれるのだろう――その成長を楽しみにまた来ようと、次のウブドへの旅を考えた一夜でした。

ガムラン演奏を含む多彩な演目

演目は7〜8、このうちガムラン演奏だけのインスツルメンタルが1〜2です。この演奏時に見せる楽団員のみなさんの楽しそうで、誇らしげな様子はダンスと同じくらい胸に響きます。

内容は定期的に変わりますが、必ずアノム氏のバリスとアユ氏のタルナ・ジャヤが上演され、これだけでも必見と思います。

また、アノム氏はバリスのほか、バロンダンス、ハノマン、トペンなども演じています。

寺院風の舞台で、バロンの踊り手とガムラン楽団が並んでいる様子。

アノム氏が演じるバロン。舞台全体から、バリ舞踊ならではの迫力が伝わります。

公演の最後に、踊り手と楽団員たちが舞台に並んでいる様子。

公演の最後、舞台に並ぶ出演者たち。温かな拍手に包まれるフィナーレのひととき。

あらすじ配布と多言語対応

スマラ・ラティでは英語や日本語で書かれた各演目の解説パンフレットが配布されるため、初めての観客でも物語の流れを理解しながら鑑賞できます。

私が参加した夜には、日本からの旅行者が「こんなにわかりやすい舞台は初めて」と喜んでいました。

公演後の楽しみ|奏者との交流

公演終了後は、アノム氏やお孫さんを囲んでの撮影会もあります。

バリ舞踊の公演後、舞台前に集まった観客が出演者たちを撮影している様子。

公演後の撮影会。撮影者の中にアノム氏も(左から4人目)

奏者たちは、公演が終わるとすぐに衣装のまま帰路につきます。お願いすれば一緒に写真を撮ってくれることもあり、私も何度かツーショットをお願いしました。

アノム氏に会えることもあり、公演後まで余韻が続く特別な時間です。

バリ舞踊の公演後、階段の前で出演者と観客が行き交っている様子。

アノム氏とアユ氏は、舞台を降りても存在感があり、忘れられない公演後のひとコマになりました

ただし、ダンサーは出番が終わるとすぐに帰ってしまうので、終演後に出会えることは稀です。

スマラ・ラティ鑑賞のコツ|席・持ち物・トイレ

席の選び方|バリ舞踊の世界に深く浸れる最前列

席は自由席なので良い場所を確保するなら開演の30分〜1時間前に到着すると安心です。

鑑賞するなら、最前列が演者の表情や細かな仕草まで見られるため特に人気です。

バリ舞踏は、目や手先、足先の張り詰めた鋭い切れや、くるくる変わる顔の表情が見どころですから、前方に座るほど臨場感が増します。ダンサーを見るなら最前列の正面がおすすめです。

ガムラン奏者の手の動きも見応えがあります。奏者の手の動きを見るなら、最前列の端の席です。私は奏者の卓越した技をみるために、あえて舞台横を選ぶことがあります。

赤と金色のガムラン楽器の前に座り、演奏する奏者たちを後ろから見た様子。

ガムラン演奏を後ろから見ると細かな手さばきがよくわかります。

私たちは、良い席を確保するため毎回1時間前には会場に着くようにしています。次々到着してくる楽団員の談笑が聞こえ、時折、覗き込む近所の子どもたちのはにかむような笑顔をみるのも、開演前の楽しみです。

持ち物とトイレ

以下を持っていくと、ゆったりした気持ちで楽しめます。

▪︎雨季:扇子や汗拭きシート
▪︎乾季:夜は肌寒いので薄手の羽織りもの
▪︎虫よけシート、ポケットティッシュ

トイレは会場外ですが表示がわかりやすく出ています。整備されていますが、私は、会場に行く前にホテルや途中で寄ったレストランなどで済ませるようにしていました。
バリ舞踊の公演会場トイレはだいたい整備されていますが、日本とは使い勝手が違うこともあります。事前に知っておくと安心です。こちらが参考になります。
▶︎ ウブド のトイレ事情|紙・有料・場所の基本と対策

スマラ・ラティ舞踊団の公演情報

スマラ・ラティ舞踊団の公演日時や写真が掲載された、会場入口付近の案内看板。

会場入り口は、この看板を目印に。

● 開演日時:土曜日の夜7時半(終演は9時ごろ)
● 会場:プラ・ダラム寺院(ラヤウブド通り王宮の西 約400m)
● 会場Google地図;Pura Dalem Ubud地図
● チケット:会場入り口で100,000ルピア(約1,000円)。現金のみ。

*上記は私たちの滞在時の情報です。公演日時・会場・料金・演目は変更されることがあります。祭礼や現地事情で中止・会場変更となる場合もあるため、観劇前に宿泊先や現地案内所で確認しておくと安心です。

会場に早めに行くことができない場合は、ホテルに予約の相談をしてみてください。ホテルによっては席の確保までしてくれます。

会場はウブドの中心部の西端にあります。徒歩での夜の移動に不安がある方は、配車アプリやバス、送迎を利用するのも安心です。状況に合わせた移動方法を書いた記事を参考にしてください。
▶︎ ウブドへの移動と滞在中の移動手段|空港送迎・Grab・TMD・カーチャーターの使い分け

スマラ・ラティ舞踏団/鑑賞体験比較とQ&A

スマラ・ラティ舞踊団/鑑賞体験比較表
舞踊団 歴史・特徴 会場・日時 公演内容
スマラ・ラティ 当初は国立芸術大卒業生中心・伝統+革新・若手育成・多言語解説 プラ・ダラム寺院 /土曜19:30 バリス・ガムラン・ガムランだけの演奏・多様な演目(解説付)
バリ王宮舞踊団 他 バンジャールで組織・格式・伝統色濃い・舞踊が主 王宮・寺院各所 毎晩開催 レゴン・バロンダンス・トペン など多種
  • Q. 会場の席取りやアクセス時の注意は?
    A. 基本的に自由席のため30分~1時間前到着推奨。ツーリストなどで予約席が確保されていることもあります。ホテルに予約の相談が可能な場合があります。
    夜の移動に不安がある場合は、ホテルに相談しておくと安心です。
  • Q. チケット・持ち物は?
    A. 入場料1,000円程度・現金払い。虫よけ・ティッシュ持参が快適です。雨季は日が落ちても暑いので扇子やハンディファンがあると快適。
  • Q. 公演後の撮影や交流はできる?
    A. 演者・奏者との写真撮影ができることがあります。ダンサーは早めに帰ることが多いのでタイミング注意。
  • Q. 初心者やシニアでも楽しめる?
    A. 日本語解説のパンフレットが用意されていることがあり、初めてでも物語の流れを追いやすい公演です。あらかじめ席やトイレ、帰りの移動を確認しておくと、より落ち着いて楽しめます。

事前に流れや注意点を知っておくだけで、公演当日は落ち着いて舞台そのものに集中できます。特にシニア世代の方は、席や移動の不安を減らしておくと安心です。

ウブドで一度は見たいバリ舞踊

スマラ・ラティは、伝統的な芸術性と観光客への配慮の両方を大切にしていると感じる舞踊団です。レゴンダンスの優雅さやガムランの迫力、美しい衣装、そして出演者の情熱が凝縮された公演は、多くの旅行者から高い評価を得ています。

ウブドを訪れる際には、旅の思い出をより豊かにしてくれる選択肢の一つとして、観劇を検討してみてはいかがでしょうか。

私自身、これまで20回以上観ていますが、同じ演目でも毎回違う感動を与えてくれます。

ウブドを訪れるなら、夜の過ごし方のひとつとして、スマラ・ラティの公演を候補に入れてみてはいかがでしょうか。舞踊とガムランが重なり合う時間は、観光だけでは味わえない、心に残る体験になると思います。

ウブドの夜は、舞踊公演のほかにも、静かなレストランでのディナーや夜散歩など、落ち着いた過ごし方が楽しめます。シニア世代でも無理なく楽しめるウブドの夜の過ごし方については、こちらの記事でも紹介しています。
▶︎ Pica South American Kitchen|落ち着いた雰囲気で楽しむ南米料理と夜の過ごし方
ニュピやオゴオゴをはじめ、バリ島で大切に受け継がれてきた行事について、まとめた記事もあわせてご覧ください。
▶︎ バリの祈りと暮らしカテゴリー一覧

この記事は、私たち夫婦が実際に観劇した時の体験をもとにまとめています。公演日時、会場、料金、演目、出演者、撮影可否などは時期によって変わることがあります。祭礼や天候、現地事情によって中止・変更となる場合もあるため、観劇前に宿泊先や現地案内所、公式情報などで最新情報を確認してください。

ウブドにはこれまで20回近く訪れ、ここ15年ほどは毎年のように3〜4週間の滞在を重ねてきました。必ず訪れる場所、観るもの、買うものが少しずつ増え、今では旅の楽しみの一部になっています。このブログでは、夫婦で楽しむバリの旅で感じたことをまとめています。

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