海外旅行を考えるときに必ず出てくる疑問が「ベストシーズンはいつか」ということです。特にバリ島は乾季と雨季がはっきり分かれているため、判断に困ります。
一般的なガイドブックなどでは「観光のベストシーズンは乾季」と紹介されることが多いのですが、私たち夫婦が30年以上通い続けてきた経験から思うのは、雨季にも乾季にもそれぞれに魅力があるということです。
乾いた風の中で散策を楽しめる乾季の日々も、スコールの後に大地の匂いに包まれる雨季の時間も、どちらもこの島ならではの体験でした。
本記事では、季節ごとの魅力や祭り、滞在費用の目安まで、実際の体験談を交えて詳しくお伝えします。
季節ごとのウブドの表情
バリ島の中心地ウブドは、季節によって町全体の表情が大きく変わります。
夏の熱気|7月〜8月
ヨーロッパからの旅行者も増えるため、人気カフェ・レストランや伝統舞踊の会場は連日満席に。私たちがある年の8月に訪れた時も、メイン通りは世界中の言葉が飛び交い、熱気に包まれていました。
しかし朝の時間帯は驚くほど静かで、長期滞在者には、早朝の散策が楽しみになります。
昼間は賑やかな表通りを歩いても、聞こえるのは人々が履く箒の音だけ、田んぼの小道を歩くときは鳥の声と風の音だけが聞こえます。
こうしたウブド本来の落ち着いた表情も見ることができ、日中の喧騒との対比こそ、私たち夫婦が乾季のウブドに惹かれる理由にもなっています。
モンキーフォレスト通りから少し外れた小道では、田んぼの稲穂が風に揺れ、朝露がキラキラと光っていました。昼の喧騒とは対照的に、この時間はほんとうに穏やかでした。
雨季の静けさ|1月〜2月
1月から2月にかけては雨の多い時期となり、一般的には「観光には不向き」と思われがちです。けれども、私たちが好んで選ぶのは、むしろこの季節です。
果物も美味しく、木々の緑も濃い。ニュピ・オゴオゴといったバリならではの行事もこの時期です。観光客も少なく、ウブドも落ち着いた表情を見せてくれます。
乾季の青空も魅力的ですが、静けさと瑞々しさが織りなす雨季のバリには、深い癒しがあります。
人混みから距離を置きたい世代や、時間を気にせずのんびり過ごしたいシニアにとっては、この季節こそが心と身体を静かにほぐしてくれる“究極のリフレッシュシーズン”になるのかもしれません。
観光客の姿もほとんどなく、聞こえるのは小鳥のさえずりと水路を流れる水の音だけ。カメラを向けると、どの角度から切り取ってもまるで絵画のようで、そこには「雨季のバリにしかない美しさ」がありました。
穏やかな季節|5月・10月
乾季と雨季のちょうど移り変わりとなる5月と10月は、観光客の数も落ち着き、暑すぎず湿りすぎない「ちょうどよい季節」です。
シニア世代にとっては、昼間でも体力を消耗せず過ごせるため、長期滞在に最適かもしれません。
風はやわらかく、庭を舞う蝶や鳥を眺めながら南国のフルーツを味わった朝は、ほかの季節にはない、静けさに包まれたひとときでした。
実際に10月に滞在した時は、宿泊したホテルのガーデンでほとんど貸し切りのように朝食をとりました。
風はやわらかく、庭を舞う蝶や鳥を眺めながら南国のフルーツを味わった朝は、ほかの季節にはない、静けさに包まれたひとときでした。
航空券とホテル費用の目安
旅の予算を考えるとき、やはり大きなウェイトを占めるのが航空券とホテル代です。
7~8月や年末年始
「ハイシーズン」なので注意が必要です。
ホテル宿泊費は2〜3割高く、高級ホテルではそれ以上に設定されることがあり、予約も早めに埋まってしまいます。
往復の航空券は10万円を超えることが少なくありません。人気のある直行便は早々に満席になり、料金も高めになります。
ただ、シニア世代にとって「楽なフライト」とは必ずしも直行便だけを意味しません。
むしろ、乗り継ぎ便を利用して途中の都市で一泊すれば、長時間フライトの疲れを分散でき、体への負担が軽くなることもあります。シンガポールやクアラルンプールで一泊して観光を楽しみつつ、翌日にバリへ向かう──そんな余裕ある旅の組み立てもおすすめです。
1~2月や5月・10月
この「ローシーズン」には、思いがけないお得感があります。往復航空券が6万円以下で見つかることもあり、ホテルの料金もぐっと手頃になりますし、予約も苦労しません。
バリを彩る祭りと宗教行事
バリ島を訪れる際にぜひ意識したいのが、独特の祭礼や宗教行事の時期です。私たち夫婦は、バリの魅力あふれる祭を経験したあとは、スケジュールを決める際に、まず「祭りの日程」を調べるようになりました。
特に印象深いのは、3月前後にある「ニュピ(バリ・ヒンドゥーの正月)」です。
前夜は「オゴオゴ」と呼ばれる鬼のような人形が、村の若者たちに担がれて街を練り歩きます。夜遅くまで続くその熱狂の翌日は、島全体が活動を止めます。
24時間外出禁止となり、飛行機も飛ばず、観光客ですらホテルから一歩も出られない――まさに「島全体が呼吸を止めたような静けさ」です。夜も灯りのない漆黒の闇となり、都会のウブドでは普段は見られない満点の星が空一面に輝きます。
他の国では決して体験できない2日間の出来事です。
また、210日に一度訪れる「ガルンガン」と「クニンガン」も見逃せません。竹で作った飾り「ペンジョール」が道沿いにずらりと並び、その下を民族衣装に身を包んだ人々が祈りに向かう光景は、シャッターを切らずにはいられませんでした。
ガルンガンとクニンガンの間の10日間は、街の通りを子ども達がバロンを連れ練り歩きます。各家の前で笛や太鼓を鳴らしてお布施をもらって歩くのですが、観光客の前でもパフォーマンスをみせてくれ、お祭り気分を味わわせてくれます。
私たちはある年の2月から3月にかけて、ニュピ、オゴオゴ、ガルンガン、クニンガンを一度に体験できる貴重な時期に、約1か月滞在したことがあります。まるで毎日がお祭りのようで、町全体が特別な空気に包まれていました。
雨季ならではの新鮮で瑞々しいフルーツもたのしめ、旅をさらに彩ってくれました。航空券や宿泊費が手頃だったことも重なり、心から充実した滞在となりました。
季節ごとの服装と持ち物
バリ島での滞在を快適にするためには「服装と持ち物の工夫」が欠かせません。これまでの滞在で痛感した点を挙げてみます。
乾季(5月~9月)
昼間こそカラッとした暑さですが、標高の高いウブドやキンタマーニ高原では朝晩が肌寒く感じることがよくあります。
実際、私たちが7月に滞在した際、朝の散歩には薄手の長袖シャツを羽織ってちょうど良いくらいでした。涼しすぎてプールで泳げない日もあります。日中との寒暖差もあるので、重ね着できる服が安心です。
雨季(11月~3月)
突然のスコールに対応できる装備が必須です。折り畳み傘や軽量のレインコートをおすすめします。すぐに乾く速乾性の服や、防水バッグも役に立ちます。
年間を通して
1年中日差しは強いので、帽子やサングラス、日焼け止めは必ず必要です。虫よけスプレーも欠かせません。もし高地に行く計画があるようでしたら、雨季でも肌寒いので羽織ものも用意してください。
季節ごとのおすすめの過ごし方
同じ島でも、乾季と雨季によって楽しみ方は大きく変わります。長年訪れてきた私たちの体験を踏まえて、「その時期だからこそ味わえる過ごし方」を紹介します。
乾季(5月~9月)
天候が安定しているため、屋外アクティビティに最適です。ウブド周辺の棚田を歩いたり、夜間は涼しくなるのでバリ舞踊を屋外ステージで鑑賞したりするのはこの季節が一番快適。観光での遠出も天気を気にせず出かけられるのが魅力です。
日中は青空の下で観光を楽しみ、夕方からは涼しい風に吹かれながらホテルのテラスで夕食をとる――これが私たち夫婦のお気に入りの楽しみ方です。
雨季(11月~3月)
雨に包まれたバリならではの時間をじっくり味わうことができます。
午後になるとスコールがやってきます。街歩き途中なら、お気に入りのカフェに身を寄せ、雨音をBGMにコーヒーをゆっくり楽しみます。
部屋のバルコニーに腰かけて何もせず雨に煙る田んぼを眺めることもあります。やがて雲が切れると、空には大きな虹が。言葉にできないほどの贅沢です。
乾季にはないこのゆったりとしたひとときこそ、雨季のバリが持つ魅力のひとつです。
この時期は市場に色とりどりのトロピカルフルーツがあふれ、朝の食卓が果物だけで満たされる日もしばしばあります。マンゴスチンやパッションフルーツの爽やかな甘酸っぱさは、雨季からのささやかなご褒美のように感じられます。
日本ではなかなか味わえない濃厚な南国フルーツの美味しさを堪能するために、私たちはあえて雨季を選部ことがあります。特に12月から1月にかけて出回るマンゴーは驚くほど手頃な価格で、贅沢にたっぷり味わえる季節限定の楽しみとなっています。
まとめ|自分に合った時期を選ぶことが最高の旅につながる
バリ島には、一年の中で二つの全く異なる表情があります。
乾季の澄んだ空気と鮮やかな青空の下でアクティブに動く時間も、雨季のしっとりした緑と雨音に包まれて心を癒す時間も、どちらも私たちにとって忘れがたい思い出を与えてくれました。
もちろん、旅行費用や混雑具合、参加できる祭りの有無によって「おすすめの時期」は人それぞれ違ってきます。
しかしシニア夫婦として30年通い続けてわかったのは、「いつ行くか」よりも「どのように過ごすか」が旅を成功に導く鍵であるということ。
次の旅でも、その時期ならではの表情を楽しみながら、自分たちらしい滞在を選び取っていきたいと思います。
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