この記事は、「バリ文化・伝統・祭り」カテゴリの入口となる概略ガイドです。
ガルンガン・クニンガン・オゴオゴ・ニュピ・バリの葬式といった主要な行事と舞踊文化について、意味・背景・旅行者への影響を全体像で整理し、詳しく知りたい方が各独立記事へ迷わず進めるよう案内しています。
初めてバリ島を訪れる方や、シニア世代・長期滞在を考えている方が、行事や祈りの文化を安心して理解するための入口としてお使いください。
この概略ガイドはこんな方に向けています
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バリ島の行事に出会ったとき、何が行われているのか分からず戸惑ったことがある
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行事の時期に旅行しても大丈夫か、観光への影響が気になっている
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若い旅行者向けではなく、落ち着いて理解できる文化・行事の情報を知りたい
この概略ガイドでわかること
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バリ島で大切にされている主要な行事(ガルンガン/クニンガン/オゴオゴ/ニュピ/葬式)の全体像
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行事と深く結びつく、祈りとしての舞踊文化の位置づけ
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行事の時期に旅行する際、知っておくと安心な影響や注意点
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各行事・舞踊を詳しく知るための独立記事への道筋
バリ島の行事はなぜこれほど大切にされているのか
バリ島の行事は、すべて バリ・ヒンドゥー教 の教えと深く結びついています。
バリでは、「神・祖先・人・自然」はすべて分断されることなく、一つの循環として捉えられています。
朝になると、家の前や道ばたに小さな供物(チャナン・サリ(Canang Sari))が置かれます。それは観光用の飾りではなく、「今日も無事に生かされていること」への感謝のしるしです。
行事とは、この日々の祈りが、年に何度も「大きな節目」となって現れる特別な時間なのです。
バリ文化を支えるもうひとつの柱|舞踊という祈りのかたち
バリ島の文化は、年に数回行われる大きな行事だけで成り立っているわけではありません。祈りや物語、神々への敬意は、舞踊というかたちでも人々の暮らしの中に息づいています。
バリ舞踊は本来、寺院の儀礼や人生儀礼の中で、神々に捧げられる奉納芸能として受け継がれてきました。葬式や大きな祭礼の前夜に行われる奉納舞踊では、舞は娯楽ではなく、祈りそのものとして扱われます。

ウブド王家の葬式前夜の奉納舞踊。魂のこもった見事なバリスの舞。
一方で、ウブドではこうした伝統を土台にしながら、舞台芸術として発展してきた舞踊文化も育まれてきました。夜になると王宮や舞台で舞踊公演が行われ、観光客もバリ舞踊に触れる機会を持つことができます。
その代表的な例のひとつが、ウブドを拠点に活動する舞踊団「スマラ・ラティ(Semara Ratih)」 です。

バリスの名手、スマラ・ラティのアノム氏の舞。
奉納芸能とは目的を異にしながらも、伝統的な所作やガムランの響きを大切にし、物語性と芸術性を重視した舞台を届けています。
行事が「暮らしの節目に現れる祈り」だとすれば、舞踊は「祈りや物語を身体で表現する文化」。奉納舞踊と舞台舞踊の両方を知ることで、バリ島の文化はより立体的に見えてきます。
供物・正装・行列に込められた意味
バリ島の行事で目にする供物・白い正装・行列には、すべてバリ・ヒンドゥー教の世界観が込められています。
供物(チャナン・サリ)

供物は、神々や祖先への感謝のしるしであり、同時に、災いを遠ざけ、一日を無事に過ごすための祈りが込められた日々のお供えです。祈りには、家族の健康、暮らしの安寧、商売の繁盛、そして道を行き交う人や旅人の安全までもが、託されています。
家の前や店先、道ばたに置かれる小さな供物は、花の色や配置、お香の煙にまで意味が込められ、バリの人々が祈りを特別なものではなく、日常の中に自然に溶け込ませて生きている証でもあります。
ちなみに、うっかり踏んでしまっても「怒られる」ことはありませんが、できるだけ避けて通るのがバリでの思いやりとされています。
正装

レストランやホテルでも、行事の時はスタッフが正装姿になることがあります。
正装は、神様の前に立つために、心と身を静かに整えるための装いです。
美しく着飾るためではなく、「祈る人」としての自分に気持ちを切り替えるための大切な準備でもあります。
布を身にまとうことで自然と背筋が伸び、日常と祈りの時間に穏やかなけじめをつける役割を果たしています。
行列(オダランなどの儀礼行進)

大通りの脇道で突然出会ったオダランの行列。
行列は、個人の祈りではなく、祈りを村全体で共有する行為です。
老人も子どもも、正装に身を包み、同じ方向へゆっくりと歩きながら、感謝と願いの気持ちを村の人々全員で分かち合っていきます。
その静かな歩みは、バリの信仰が「特別な日だけのもの」ではなく、人々の暮らしそのものと深く結びついていることを私たちに教えてくれます。
行事の日に寺院へ入るときの注意点
ガルンガンやクニンガンの時期には、正装をした人々が寺院へ向かう光景を目にしますが、すべての寺院が観光客に開放されているわけではありません。
特に村の寺院では、行事の日は関係者のみ立ち入りとされ、旅行者は外から静かに見守るのが一般的です。
観光客の立ち入りが可能な寺院でも、肩や膝が大きく露出しない服装を心がけ、必要に応じてサロン(腰布)を着用し、服装への配慮をします。寺院では入口で貸し出しているところもあります。
行事中は祈りや供物の時間が流れているため、写真撮影や近距離での見学は控えめにするのが無難です。「入ってよいか迷う」と感じた場合は、無理に進まず一歩引く判断が、結果的に最も敬意ある行動になります。
ガルンガンとは? 祖先の魂が戻る大切な祝祭
ガルンガン は、祖先の魂が一時的にこの世に戻り、家族と共に過ごす期間とされる、バリ島で大切な祝祭です。
210日周期のバリ暦に基づいて行われるため、西暦では年によって1回または2回巡ってきます。
ペンジョールが立ち並ぶ島で最も美しい季節

ガルンガンからクニンガンにかけてのペンジョールの風景
この時期になると、各家庭の門の前にペンジョールと呼ばれる竹の大きな飾りが立てられます。
しなやかに弓なりにしなる姿は、「山の恵み」、「稲の実り」、「神への感謝」を象徴しています。ウブドやデンパサールの通りは、まるで竹のアーチに包まれた別世界のような光景になります。
ガルンガン期間の人々の過ごし方
朝は家族そろって寺院へ祈り、昼は親戚や知人の家を訪ねる、夕方は女性たちが供物づくり、夜は家族で食卓を囲む。
住民にとっては「仕事よりも家族と祖先を大切にする期間」です。
旅行者への影響
- 店の営業時間が短縮されることがある
- 午前中は寺院周辺の道路が混みやすい
- 小規模な交通規制が入ることもある
観光そのものができなくなることはほとんどありません。むしろ、最もバリらしい風景に出会える特別な時期でもあります。
クニンガンとは?祖先を天へ送り出す静かな祈りの日

クニンガンの朝、寺院で供物を供え、祈りを捧げる。(ハノマン通り)
クニンガン は、ガルンガンから10日後、祖先の魂を再び天へ送り出す日。バリ島で最も重要な祝祭とされます。
「クニン」とは黄色を意味し、供物も黄色を基調としたものが多く見られます。
ガルンガンが「再会の日」なら、クニンガンは「見送りの日」。にぎやかな祝祭が終わり、静かで穏やかな祈りの時間が流れます。
クニンガンの祈りは午前中で終え、午後は日常へ戻っていきます。
旅行者への影響
- 午前中は寺院周辺がやや混みやすい
- 一部の店や施設が午前のみ短縮営業になることがある
- 午後からは通常の街の雰囲気に戻る
ガルンガンに比べると落ち着いており、観光への影響は比較的少ない日です。
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オゴオゴとは?島中が揺れる悪霊払いの夜

バンジャールごとに作ったオゴオゴを競う。
オゴオゴ は、ニュピ(静寂の日)の前夜に行われる、悪霊払いの大行進です。
巨大な鬼の人形を若者たちが担ぎ、太鼓や掛け声とともに街を練り歩きます。最後はオゴオゴを燃やし、悪霊とともに邪気を浄化します。
一見するとお祭りのようですが、もともとは島に溜まった負の気を外へ追い出す宗教儀式です。
旅行者への影響
- 夕方〜夜にかけて大規模な混雑が起こる
- 太鼓や歓声の音が非常に大きい
- 交通規制により車両移動が難しくなることがある
オゴオゴ見学時の注意(旅行者向け)
オゴオゴは夜に行われ、通りは非常に混雑し、太鼓や掛け声の音も大きくなります。最前列での見学にこだわらず、ホテルのバルコニーやレストランの2階席など、距離を取れる場所から眺めるほうが安心です。
小さなお子さまやシニア世代は、無理をせず、体調や聴覚への負担を優先しましょう。
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ニュピとは?島も空港も止まる「沈黙の日」
ニュピ は、バリ・ヒンドゥー教の新年にあたる、完全な静寂の日です。
この日は、外出、火の使用、強い照明、仕事、など全ての活動が禁止されます。空港の離着陸もできません。
観光客であっても、ホテルの敷地外へ出ることはできず、うっかり出てしまうと、自警団に戻るように促されます。
レストラン・カフェも閉まっていますし、ホテルのサービスもほとんど受けられませんから、当日の食事を調達する必要があります。ホテルによっては、簡単なお弁当を用意してくれるところもあります。
旅行者への影響
- 外出不可(ホテル敷地内のみで過ごす)
- レストラン・カフェは基本的に閉店
- ホテルのサービスは最小限になる
- 事前に食事や飲み物を準備する必要がある
少し不便かもしれませんが、何もしない時間の贅沢を感じますし、夜は人工の光が消え、満天の星が広がる幻想的な夜になります。
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バリ島の葬式とは? 死は「別れ」ではなく「旅立ち」

バリ島では、死は終わりではなく魂が次の世界へ向かう旅立ちと考えられています。そのため葬式は、悲しみだけに包まれる場ではなく、魂を解放するための神聖な儀礼として行われます。
火葬儀礼「ガベン」
ガベン と呼ばれる王家の火葬儀礼では、巨大な牛や塔の棺が作られ、村人総出で担ぎ、火に還します。これは魂を輪廻から解き放ち、天へ帰すための最も重要な儀式とされています。
旅行者への影響
- 葬列による一時的な交通規制が行われることがある
- 道路を横断できない時間帯が生じることがある
- 写真撮影や近距離での見学は控える必要がある
葬列に遭遇したときは、写真はむやみに撮らず、行列を横切らないことがマナーです。静かに見守る姿勢が、何よりの礼儀になります。
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行事のある時期に旅行する際の注意点まとめ
行事は突然始まることも多く、開始時間が日本ほど正確ではありません。また、道路封鎖や店の営業時間、舞踊公演の予定が変わることもあります。
「予定通りに進まない」ことそのものが、バリ島の暮らしのリズムの一部でもあります。
| 行事名 | 影響の大きさ | 主な影響内容 | 旅行者の対応ポイント |
|---|---|---|---|
| ガルンガン | 小〜中 | ・一部店舗が短縮営業 ・午前中、寺院周辺が混雑 ・小規模な交通規制 |
観光は通常可能。午前中の移動は余裕を持つ |
| クニンガン | 小 | ・午前中のみ寺院周辺がやや混雑 ・一部店舗が午前のみ短縮営業 |
午後は通常に戻る。観光への影響は軽微 |
| オゴオゴ | 中 | ・夕方〜夜に大混雑 ・大音量の太鼓・掛け声 ・夜間の交通規制 |
無理に近づかず、宿や高所から見学 |
| ニュピ | 大 | ・外出不可(島全体) ・空港閉鎖 ・飲食店ほぼ全休 |
事前に食事準備。ホテル内で静かに過ごす |
| 葬式(ガベン) | 小〜中 | ・葬列による一時的通行止め ・道路横断不可の時間帯あり |
写真は控え、静かに待つ・迂回する |
- 「影響が大」なのは実質ニュピのみ( 事前に知っていれば、滞在自体が困ることはほぼありません。)
- ガルンガン/クニンガンは「不便」よりも街の雰囲気が変わる行事として受け止めるのが自然です。
- オゴオゴは音・人出が激しいため、体力や聴覚に不安がある場合は距離を取る判断が重要です。
- 葬式は観光対象ではなく、遭遇したら流れに任せて待つのが最も無難です。
2026年・2027年の主な行事予定(目安)
※宗教暦のため、現地事情で前後する場合があります。
【2026年】
- ニュピ:3月19日
- オゴオゴ:3月18日 夜
- ガルンガン:6月17日
- クニンガン:6月27日
【2027年】
- ニュピ:3月9日
- オゴオゴ:3月8日 夜
- ガルンガン:1月13日/8月11日
- クニンガン:1月23日/8月21日
葬儀、特に盛大な王家の葬儀(ガべン)の予定、および上記のついてもこちらで調べることができます。
「バリ観光協会」はHPでバリ観光のあらゆることを網羅。:公式イベント情報
「APA?」は日本語対応とウブドに詳しい観光案内が魅力。:APA?情報センター
よくある質問(Q&A)
Q1. 行事の時期にバリ島へ旅行しても問題ありませんか?
ほとんどの場合問題ありません。
ニュピを除けば、観光が完全にできなくなる行事はほぼなく、店の営業時間が短縮されたり、道路が混みやすくなったりする程度です。事前に行事を知っておけば、むしろバリらしい雰囲気を感じられる時期になります。
Q2. ニュピの日に到着・出発することはできますか?
できません。
ニュピ当日は空港が完全に閉鎖され、到着・出発ともに不可です。前後の日程を含めて航空券や宿泊日を調整する必要があります。
Q3. 行事の日に寺院へ入ってもいいのでしょうか?
寺院によります。
観光寺院であれば立ち入り可能な場合もありますが、村の寺院では行事の日は関係者のみとされることが多く、旅行者は外から見守るのが一般的です。迷った場合は、無理に入らず一歩引く判断が最も無難です。
Q4. 寺院に入る場合、どんな服装が必要ですか?
肩や膝が大きく露出しない服装が基本です。
多くの寺院ではサロン(腰布)の貸し出しがあり、旅行者が正装一式を用意する必要はありません。大切なのは、祈りの場に入る意識を示すことです。
Q5. オゴオゴは子どもやシニアでも見学できますか?
見学は可能ですが、無理はしないことが大切です。
夜は混雑と大音量になるため、最前列ではなく、ホテルのバルコニーや2階席のあるレストランなど、距離を取れる場所からの見学が安心です。
Q6. 葬列や葬式に遭遇した場合、どうすればいいですか?
写真撮影は控え、行列を横切らず、静かに流れが過ぎるのを待つのが最も礼儀正しい対応です。
バリ島の葬式は観光対象ではなく、祈りの場であることを意識しましょう。
Q7. 行事の開始時間は正確に決まっていますか?
日本ほど正確ではありません。
行事は準備や天候、村の都合で前後することがあり、「予定通りに進まない」こと自体がバリの暮らしの一部です。移動や観光は、余裕を持った計画がおすすめです。
Q8. 行事の時期に避けたほうがよいことはありますか?
無理なスケジュールを組むこと、大音量や混雑に無理に近づくことは避けたほうが安心です。
行事は「見に行くもの」ではなく、「出会ったら受け止めるもの」と考えると、滞在が穏やかになります。
Q9. 行事を知らなくても、旅行は楽しめますか?
もちろん楽しめます。
ただ、少し知っているだけで戸惑いが減り、旅の安心感が大きく変わります。行事を理解することは、バリ島をより深く味わうための補助線のようなものです。
Q10. 初心者・シニア世代にとって一番注意すべき行事はどれですか?
旅行計画に大きく影響しやすいのは、実質ニュピのみです。
それ以外の行事は、事前に知っていれば大きな支障はなく、むしろバリらしさを感じられる機会になります。
行事について知っておくことは、特別な準備をするためではなく、安心して、穏やかに旅をするための知恵です。
まとめ|行事を知ってから旅をすると、バリ島はまったく違って見える
バリ島の行事は、観光イベントではなく、人々の暮らしと信仰のリズムそのものです。
供物や正装、行列、そして舞踊のひとつひとつに、感謝や願い、祈りの心が込められています。
意味を少し知るだけで、街の見え方や空気の感じ方が変わってきます。思いがけず出会う祈りの時間や、予定通りに進まないひとときも、バリらしさを感じる大切な体験になります。
行事や文化を知ったうえで歩くバリ島は、にぎやかさの奥にある静けさや、人々の営みの深さが自然と心にしみてくるはずです。


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