祈りの島バリの中心、緑深いウブドは、ゆったりと過ごすことで自然と心が整っていくような町です。
初めて訪れた時、南部の喧騒とはまるで違う静けさにとても惹かれました。朝の祈りの時間、どこからともなく聞こえるガムランの音——そんな空気の中、のんびりと町を歩く時間は格別です。
シニア世代にとって、その魅力に満ちたウブドでの滞在を快適にするカギは、無理のない移動手段を選ぶこと。
この記事では、私自身の体験を交えながら、
「空港〜滞在先」、「中心街の散歩」、「郊外の散策」、「観光地巡り」の4つの場面に分けて、シニアにもやさしい移動方法を紹介します。
徒歩、ホテル送迎、Grab(配車アプリ)、カーチャーター、そしてメトロデワタ(TDM)バス。
それぞれの特徴を理解し、上手に組み合わせることで、旅はもっと快適に、もっと自由になります。
空港から滞在先へ
デンパサール国際空港(ングラ・ライ空港)からウブドまでは約35km。普通は1時間半ほどですが、夕方になると2時間以上かかることもあります。
途中ののどかな小さな村をいくつか通りすぎ、ライステラスの広がりが見えてくると、旅の疲れも忘れていきます。
ここでは、私が実際に利用して便利だった「ホテル送迎」と「オンライン送迎サービス」を中心に紹介します。
快適・確実|ホテル送迎
長旅の後は、ホテル送迎を利用するのが最も安心。名前を掲げて待っていてくれる安心感は他に代えがたいものです。
ホテル予約時に一緒にリクエストしておくと安心です。ホテルによっては無料のところもありますが、だいたい片道30~40万ルピア(約3,000〜4,000円)。途中で両替や買い物の立ち寄りにも対応してくれます。
気のきいたドライバーですと、道中の観光案内をしてくれることも。
ホテルによっては送迎そのものがないこともありますが、その場合は、次で触れる「オンライン予約サービス」利用がお勧めです。

安くて安心|オンライン送迎サービス(Klookなど)
最近ではKlookなどの「オンライン送迎サービス」を利用する日本人旅行者も増えています。
ネットの予約が簡単でしたので、私たち夫婦も一度利用したことがあります。
車種が選べるのはリーズナブルですし、事前決済ができ、飛行機遅延にも対応してくれる点が安心でした。実際に到着時、ドライバーが便名で到着時間を確認してくれていました。
費用は約2,500円前後とリーズナブル。日本語は通じませんが、丁寧な対応でトラブルはありませんでした。
有料のホテル送迎やタクシー、カーチャーターに比べ安く、トラブルも少ないので、お勧めです。
割高|カーチャーター
カーチャーターは、オンライン予約と同じで、事前に予約をしドライバー付き車を手配。ただし本来6~8時間の観光案内が業務なので、ウブドまで2時間足らずの移動は割高になります。
余りお勧めしませんが、日本語対応のドライバーがいるところもあるので、言葉が通じにくいオンライン予約やタクシーが不安な方にはいいかもしれません。
お勧めしない|Grab、空港タクシー
空港タクシーは定額制ですが割高で、ウブドまでRp500,000〜600,000。予約は不要で到着時にタクシー専用のカウンターまで行き手配します。
Grabを利用する場合は、一般車が空港構内に入れないため、離れた専用ピックアップエリアまで徒歩で移動が必要です。
いずれも荷物が多い、夜間到着といった場合は、お勧めしません。
ウブド中心部の街歩き
ウブドの中心部はこぢんまりしているので徒歩が基本。歩いてこそウブドの街の息遣いが伝わってきます。
でも、足に自信がない方やシニア世代、夜間の移動といった場面では、負担を軽くする方法も知っておくと安心です。
他地域に比べるとGrabを捕まえるのが若干難しく、私たちも断られたことがありました。そういうこともあり私たち夫婦は、もっぱら路線バス「TDM」や「ホテルの無料送迎」を活用。
ウブド内はメータータクシーの営業ができないエリアですが、代わりにローカルタクシーが意外と使える移動手段です。
徒歩で感じるウブドの魅力
モンキーフォレスト通り、ハノマン通り、ラヤウブド通り――ウブド中心部は、シニアでも徒歩で十分に楽しむことができます。
私たちはよく、朝の涼しい時間に、滞在先のテガルサリからウブド市場に歩いて出かけ、朝の活気を感じながら、新鮮な果物を買って帰りました。
暑い日中でも至る所にい居心地のいいカフェがあるので、休み休み歩けば決して苦になるようなことはありませんが、それでもTDMバスはウブドでの長い滞在を支えてくれました。
疲れた時は、ハノマン通りでTDMを利用し、スーパーCOCO前で下車。シニア世代になり、長距離散歩が辛いと感じる時、TDMバスは頼れる足です。
夜間のレストランや舞踏公演(スマララティなど)の帰りは、ホテルの無料送迎の利用がおすすめ。事前に時間と場所を伝えておくと、暗い夜道を歩かずに済みます。
TDMバスで街歩きがグッと楽に

最近ウブドで話題なのがバリ南部を巡回する路線バス「トランス・メトロ・デワタ(Trans Metro Dewata、略してTDM)」。路線の一部がウブド中心部を走っています。
地元の足ですが、観光客にも利用しやすく整備されています。
シニア世代となり、街歩きが少し辛くなってきましたが、前回ウブドに滞在した時は、毎日のように活用しすることで行動範囲が広がりました。

TDMは約15~20分間隔で運行。日本のように正確ではありませんが、「来たら乗る」くらいの気持ちが、バリの生活に合っています。
冷房が効いた車内は快適で、ひと乗り料金はRp4,400(約40円)、プリペイドカードまたはQRIS決済対応。
停留所と経路を知っておけば、「宿から徒歩でTDM停留所まで → 王宮方面へ → 帰りはTDMかGrabで戻る」といった柔軟な動き方ができます。
バスから見るウブドの通りは徒歩とは違う新鮮さがありますし、地元の人々のための路線バスということもあり、暮らしぶりを垣間見ることもでき、魅力的な移動手段です。
ウブド周辺の散策
ウブドの魅力は、中心部を少し離れた周辺エリアに広がっています。チャンプワン・リッジ・ウォーク、ニュークニン、スリウェダリ……。

どの村も田園風景やカフェが点在し、シニアでも無理のないペースで歩ける穏やかな散策ルートが揃っています。
シニア世代でも、ホテルの無料送迎、TDMバス、Grabを上手につかえば、より無理なく歩くことができます。
まずルートを検討し、移動手段を組み合わせる
ウブド周辺を歩く際は、あらかじめルートを検討し、どの部分でTDMなどを使うかを考えておくと安心です。距離や坂道を考慮して事前に計画することで、無理なく1日を楽しめます。
それぞれの交通手段には特徴があります。
ホテル送迎は「行きに途中まで送ってもらう」のがスムーズ。帰りはGrabやTDMを自分のタイミングで使えるので、自由度が高く、疲れた時にも安心です。
TDM(メトロデワタ)バスは“起点まで”の移動に
TDMはウブド中心部を循環するバスのため、郊外までの移動には向きません。そのかわり、散策の起点までの足として利用すると便利です。
たとえば、
- 宿からTDMでモンキーフォレストまで移動 → 徒歩でニュークニン方面へ
- 帰りはGrabで中心部へ戻る
このように活用すれば、徒歩距離を減らしながらも、ウブドの自然と街並みを楽しむことができます。
意外と使えるローカルタクシー
以前は、通りを歩けば何台も声をかけてくる「ローカールタクシー」がいましたが、駐車禁止措置が取られるようになり、余り見なくなってしまいました。
しかし、ウブド王宮周辺、主要な通りの交差点付近、夜のバリ舞踊公演会場付近、など観光客が集まる場所では今もよく見かけます。
ローカールタクシーは日本の白タクのようなものですが、バンジャール(共同体)が管理しているので、意外と安心して利用できます。
相場を知ってうまく使えば、夜間の帰り道や、郊外散策の帰りに利用するといいかもしれません。
大体、王宮からモンキーフォレストまでRp80,000(約800円)ほどですから、1kmRp100,000といったところでしょうか。乗車する時は、目的地を告げ必ず料金を確認することが大切です。
予約もでき、観光地への送迎にも対応。見かけたローカルタクシーと直接交渉をします。乗車場所、時間、目的地、料金を決め、必ず連絡方法を聞いておきます。大抵のドライバーは名刺を持っています。
例えば、チャンプワン・リッジ・ウォークを歩くのに、「ホテルから起点まで」と「終点からホテルまで」を予約しておくということもできます。
昔は、「どんな車を持っているかを確かめて」と言われていましたが、今はどのタクシーもよく整えられた車を持っています。それでもそういうことに少し気をつけておくといいと思います。
無理をしない、休みながら歩く
シニアの散策に大切なのは、「距離よりも心地よさ」です。木陰のベンチで風を感じたり、途中のワルンで冷たいジュースを飲んだり。その休む時間も散策の一部です。
「今日はここまでにしよう」と思える余裕こそ、長期滞在を続ける秘訣。疲れを感じたら、迷わずTDMやGrabを利用しましょう。
観光地巡り
少し足をのばして観光したいときは、カーチャーター(専属ドライバー付き車)か、ホテルのサービスを使います。
ホテルによっては、有料ですが観光でドライバー付き車を出してくれます。滞在のテガルサリでも、日本語のできるドライバーがつれていってくれました。手軽ですが、案内のプロではないので、物足りないかもしれません。
その点カーチャーターは、きめ細かい案内をしてくれ、日本語対応もあるので安心です。トイレの場所や使い方、撮影スポット、なども教えてくれます。車に荷物を置いたまま、身軽に観光できるのも意外に大きなポイント。
観光案内だけでなく、祭礼見学などで必要な衣装の貸し出し・着付けサービスもあります。
1日チャーターの目安は50~70万ルピア(約5,000~7,000円)。自由度が高く、自分のペースで観光できます。



おわりに
ウブドの魅力は、観光地巡りよりも、ゆるやかな時間の流れそのものにあります。
朝の光の中を歩き、昼はカフェで休み、午後はTDMで王宮へ。そんな穏やかな1日が、やがて「暮らすような旅」に変わっていきます。
無理をせず、自分のペースで過ごすこと——それがウブドで長く滞在するための一番のコツです。


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